不動産を共有名義とは?不動産を共有名義にするメリット・デメリットを解説

不動産を所有する方法には、主に単独所有と共有の2つの方法があります。一般的には、単独所有の方法がとられますが、さまざまな事情から共有を選択するケースもあります。

しかし、不動産を共有することは、メリットだけではなくデメリットも存在しますので、それらをしっかりと理解したうえで、共有という方法を選択することが大切です。

今回は、不動産を共有名義にするメリット・デメリットや不動産の共有状態を解消する方法について解説します。

1、不動産が共有名義になるケース

不動産が共有名義になるケースとしては、主に、以下の2つのケースが考えられます。

(1)不動産購入時に共有になるケース

不動産を購入するときに、複数人で資金を出し合って購入すると不動産は共有名義になります。

たとえば、夫婦がマイホームを購入する際にペアローンを利用した場合には、夫婦の共有名義になりますし、親からマイホーム購入の頭金を出してもらった場合には、親子での共有名義になります。

親から頭金を出してもらうケースでは、子ども名義の単独所有にすることもできますが、その場合には、親から頭金の贈与を受けたという扱いになりますので、贈与税が課税される点に注意が必要です。

(2)相続時に共有になるケース

相続財産に不動産が含まれている場合には、誰が不動産を相続するかについて、相続人の遺産分割協議によって決める必要があります。

しかし、遺産分割協議を行ったものの、誰が相続するか決まらないという場合には、とりあえず法定相続分どおりに相続登記を行うことがあります。相続人が複数人いる場合には、相続財産である不動産は、相続人全員の共有名義となります。

2、不動産を共有名義にするメリット

不動産を共有名義にすると以下のようなメリットがあります。

(1)住宅ローンを組みやすくなる

不動産購入時に共有名義にするメリットとして、住宅ローンが組みやすくなるという点が挙げられます。

金融機関に住宅ローンの申し込みをすると、申込者の収入や資産を基準に審査が行われます。マイホームを夫婦が共有名義で購入する場合には、ペアローンを利用することができますので、夫婦それぞれの収入と資産を基準に審査をしてもらうことができます。1人の収入と資産では、ローンを組むことができなくても、2人分の収入と資産があれば審査が通りやすくなるといえます。

(2)共有者全員が住宅ローン控除を利用できる

住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税や住民税から最大13年間控除することができる制度です。この制度を利用することで、住宅ローンの金利負担を軽減しながら、希望する住宅を取得することが可能となります。

不動産を共有名義にして、夫婦がペアローンを利用した場合には、夫婦それぞれの借入額が住宅ローン控除の対象となります。そのため、不動産を共有名義にすれば、節税効果を高めることができます。

(3)相続時の不公平感が少ない

遺産相続時に共有名義にするメリットとして、相続時の不公平感を少なくすることができるという点が挙げられます。

相続人には、法律上法定相続分が定められていますので、基本的には、法定相続分に従った遺産分割を行います。しかし、不動産が相続財産に含まれる場合には、現金や預貯金のように法定相続分で分けることが難しいため、特定の相続人が不動産を相続すると、他の遺産の状況次第では相続人間に不公平感が生じることがあります。

しかし、相続人の共有名義にすれば、法定相続分どおりの持分を設定することができますので、このような不公平感は解消されます。

3、不動産を共有名義にするデメリット

不動産を共有名義にすると、以下のようなデメリットがあります。

(1)自由に売却や処分ができない

共有不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要です。共有者が複数人いる場合には、すべての共有者の同意を得なければ不動産の売却や処分をすることができませんので、不動産の利活用が著しく制約されるおそれがあります。

夫婦でマイホームを購入したとしても、その後離婚して別々に暮らすこともあります。いざ不動産を売却しようとしても、離婚した元配偶者と連絡がとれず、不動産の売却ができないという事態にもなりかねません。

不動産を共有名義にする場合には、将来このような制約が生じることを十分に理解しておくことが大切です。

(2)世代交代により権利関係が複雑化する

共有者の共有持分は、相続の対象となります。そのため、共有者が死亡して相続が開始すると、共有者の持分は、共有者の相続人に引き継がれていきます。さらに共有者の相続人が死亡すれば、その相続人に引き継がれていき、世代交代により権利関係が複雑化していくことになります。

不動産を共有状態のまま放置していると、共有者がどんどん増えていき、最終的には誰と共有しているかわからない状態になることもあります。自分の代であれば共有状態でも問題ないケースでも、世代交代が進むにつれて、子どもや孫に対して、迷惑をかけるおそれもあります。

このように共有不動産は、負の遺産になるリスクがありますので、子どもや孫への負担を軽減するという意味でも、早い段階で共有状態を解消するのが望ましいといえます。

(3)離婚時の財産分与で揉める可能性がある

夫婦が離婚する際には、婚姻中に夫婦が築き上げた財産を清算することができます。これを「財産分与」といいます。

財産分与では、夫婦の共有財産を2分の1の割合で分けるのが基本となりますが、住宅ローンが残っている共有名義の不動産がある場合には、その扱いで揉めることがあります。

離婚という個人的な事情は、金融機関には無関係ですので、離婚をしたからといって、住宅ローンの主債務者や連帯保証人を外れることはできません。離婚後自宅に住んでいないにもかかわらず、共有名義にしていたためにローンを負担していかなければならないといった事態にもなるおそれがあります。

4、不動産の共有状態を解消する方法

不動産を共有名義にすることは、デメリットが大きいため、できるかぎり不動産の共有は避けた方が望ましいといえます。以下では、不動産の共有状態を解消する方法について解説します。

(1)共有分割以外の方法で遺産相続をする

不動産の遺産相続の方法には、以下の4つの方法があります。
●現物分割……遺産を相続人間で物理的に分ける方法
●換価分割……遺産を売却したうえで、売却代金を分ける方法
●代償分割……一部の相続人が遺産を取得する代わりに、代償金を支払う方法
●共有分割……遺産を相続人の共有名義にする方法

不動産の遺産相続の場面では、共有名義での相続ではなく、むしろそれ以外の方法が一般的な方法です。共有分割は、他の遺産相続の方法がとれないなどの特別な事情がある場合に、最終的に選択する方法ですので、まずは、共有分割以外の方法での遺産相続を検討してみるとよいでしょう。

(2)共有持分の買い取りまたは売却をする

共有不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要になりますが、共有者の共有持分の売却であれば、共有者が単独で行うことができます。

そのため、不動産の共有状態を解消したいという場合には、共有持分の売却をすることで共有状態から離脱することが可能です。ただし、完全な所有権とは異なり、共有持分という形では、一般の買い手が見つかる可能性は低く、買い取り業者への売却になるケースが多いです。その場合には、相場よりも低い金額での売買になりますので注意が必要です。

また、ご自身で不動産を利用したいという場合には、他の共有者に連絡をして、共有持ち便の買い取りをするという方法も考えられます。すべての共有者から共有持分を買い取ることができれば、自分だけの単独所有にすることができます。ただし、買い取りを強制することはできませんので、持分の売却に反対している共有者がいる場合には、この方法はとれません。

(3)共有物分割請求を行う

共有物分割請求とは、共有不動産の共有状態の解消を求める手続きのことをいいます。共有物分割請求には、以下の3つの方法があります。

①当事者同士の話し合い

共有物分割請求をする場合には、まずは、共有者全員で話し合いを行い、共有状態の解消を目指します。共有状態を解消する方法としては、共有者の1人がすべての持分を取得する、共有者の1人に無償で持分を譲渡する、第三者に共有不動産を売却し売却代金を分けるなど共有者が自由に決めることができます。

②共有物分割請求調停

共有者同士の話し合いで解決できない場合には、裁判所に共有物分割請求調停の申立てを行います。

調停では、調停委員の立ち合いのもと話し合いが進められますので、当事者だけの話し合いに比べると冷静な話し合いが期待できる手続きです。しかし、あくまでも話し合いによる解決手段ですので、お互いの合意が成立しなければ調停は不成立となります。

③共有物分割請求訴訟

当事者の話し合いや調停で解決できない場合には、最終的に裁判所に共有物分割請求訴訟を提起します。

共有物分割請求訴訟では、裁判所が適当と考える共有物の分割方法を決定しますので、必ず結論を出すことができます。しかし、必ずしも当事者が希望する分割方法になるとは限りませんので注意が必要です。

5、まとめ

不動産を共有名義にすることには、メリットもありますが、それを上回るデメリットも存在します。安易に不動産を共有名義にしてしまうと、将来さまざまなトラブルが生じるリスクが高まりますので、まずは共有状態にしない方法を考えていくことが大切です。

既に共有状態になっているという場合でも、共有物分割請求によって共有状態を解消できる可能性があります。共有不動産に関する問題を解決するには、専門的知識や経験が不可欠となりますので、まずは、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

ダーウィン法律事務所では、共有不動産の取り扱いに力を入れています。共有不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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